鈴木三河屋につきまして
王祿特約店である鈴木三河屋(東京都港区赤坂)が、令和6年7月末日をもって閉店する運びとなりましたことを、ここにご報告申し上げます。
鈴木三河屋をご愛顧いただき、購入頂いてまいりました皆様に、心よりお礼申し上げます。
そして、今後ご迷惑ご不自由をお掛けする事につきまして、この場をお借りして深くお詫び申し上げます。
鈴木三河屋 鈴木修さんとのお付き合いは、平成21年12月にスタートしました。
初荷を受け取った鈴木さんから頂いた言葉が今も心から離れません。
「確かに石原さんの『お子様』お預かりしました。
今、2階の冷蔵庫で一休みしておりますが、間もなく晴れの舞台に出発です!
先日、大切なお客様に試飲して頂きました。
『鈴木さん、美味しいお酒を紹介して頂いて本当に有り難う』
その言葉を頂戴して、私は足の震えが止まりませんでした。
私は、素晴らしいお酒と、それを盛り立てるお客様に巡り会うことができ、幸せを感じております!」
あれから15年。殆ど歳も変わらないにもかかわらず全く大人になりきれない私を、いつも有り余る愛情と穏やかな笑顔で包んでくれ、支え続けてくれました。素晴らしいお客様方との出会いもありました。それは楽しく豊かな時間でした。時には思わぬトラブルに巻き込まれることもありましたが、力を合わせて乗り越えてきました。彼は常に穏やかで誰に対しても底なしに優しく、ですが固く1本通る真っ直ぐな筋を持っていました。その彼が、このような形での立ち退き要請により閉店を余儀なくされた事に、私は憤りを隠せません。そして何より無力な自分に対する怒りを収めることができず現在に至っています。
鈴木三河屋は、赤坂の地で彼の父が開業し、その父君が早世した際、23歳の若さで後を引き継ぎました。彼は遺された兄弟の生活を支え、父から託された大切な鈴木三河屋の暖簾を守り続けました。業務用主体だった店を、心の通じる造り手の顔が見える地方銘酒専門の現在の形に変化させ、平成30年には創業60周年を迎えました。コロナ禍に於いても即座に一般のお客様へのアプローチを堅実にし、売り上げを殆ど落とすことなくお客様からの信頼を受け続けてきました。
よもや鈴木三河屋にこんなことが起こるとは、我々造り手は勿論、お客様も想像だにしなかったことでしょう。
無念です。
製造元や特約店の仲間達、その家族、蔵人達が鬱々とする中、潔く退くことを決めた彼は、今、大切なお客様の為、引き継ぎに全力を注いでいます。一生懸命お客様と特約店を回り、「後を頼みます」と。どこまでも造り手とお客様の事を優先するその姿勢に言葉がみつかりません。
現在、鈴木三河屋は閉店を惜しむお客様が途絶えません。それは都内に留まらず、他府県からも足を運ばれ涙を流し別れを惜しんでいます。
鈴木さん、京子さん
我々はこれからもあなた方から受けた愛情と誇りを糧に造り続けます。
そして、鈴木さんは我々の大切な友としてこれからも変わりません。
落ち着いたらまずは1杯!
楽しみにしています。 令和6年5月 石原丈径
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